インターネットを普段使わない方へ ~意外と知らないあなたの『ネットの足跡』と安心のために~
あなたは「あまりネットを使わないから大丈夫」だと思っていませんか?
インターネットやスマートフォンは、私たちの生活に深く根ざしてきました。しかし、「自分はそんなに難しくないことはやらない」「メールや少しの調べものくらいしか使わないから大丈夫」と感じている方もいらっしゃるかもしれません。
もちろん、インターネットを使うこと自体が悪いわけではありませんし、必要最低限の利用にとどめている方も多くいらっしゃいます。ただ、ここで少し考えてみていただきたいことがあります。それは、「あなたがインターネットを積極的に使っていなくても、あなたの情報がインターネット上に残っている可能性がある」ということです。
これが、「デジタルタトゥー」と呼ばれる問題の一つと関係しています。今回は、あなたが普段あまりインターネットを使わないとしても、なぜあなたの情報がネットに残ってしまうことがあるのか、そして、それにどう向き合い、どう安心できるのかをお話ししたいと思います。
デジタルタトゥーとは? なぜあなたが使わなくても情報が残るのか
デジタルタトゥーとは、インターネット上に一度公開された情報が、まるでタトゥーのように消えにくく、残り続けてしまう状態を指します。これまでの記事では、ご自身がSNSに投稿した内容や、ネットショッピングの履歴などがこれにあたることをお話ししてきました。
では、あなたが積極的にネットを使っていなくても、なぜ情報が残るのでしょうか?その主な理由は、「誰か他の人があなたの情報についてインターネット上に書き込んだり、写真を載せたりした」 ことにあります。
例えば、
- ご家族やご友人が、一緒に写っているあなたの写真をインターネットに投稿した。 (SNSやブログなど)
- あなたが所属していた団体や、お付き合いのある会社が、名簿やイベントの様子の写真をホームページに載せた。 (氏名、役職、写真など)
- 過去に新聞やニュースで取り上げられた出来事で、あなたの名前や写真が掲載された。 (インターネット上のニュース記事として残る場合がある)
- あなたが利用したお店の「お客様の声」として、許可なく写真や名前が紹介された。
これらはほんの一例ですが、あなたが直接インターネットに情報を入力したり、投稿したりしていなくても、周囲の人や関わりのある組織を通じて、あなたの情報がネット上に現れる可能性があるのです。これは、まるであなたが写っていなくても、集合写真に周りの人が写っていれば、その写真が回覧板で回ってくることがあるのに似ています。デジタルな世界では、その回覧板が世界中にいつでも見られる状態で置いてある、といったイメージです。
どんな情報が残る可能性があるのか、具体的な例
具体的に、あなたが意図せずインターネットに残ってしまう可能性のある情報には、以下のようなものがあります。
- あなたの顔写真や姿 (集合写真など、あなたがメインでなくても)
- あなたの氏名
- あなたが過去に所属していた団体名や会社名
- あなたが住んでいる地域に関する情報の一部 (イベント参加者のリストなどから推測される場合)
- あなたが関わった出来事に関する情報
これらの情報が単独で残ることもあれば、いくつか組み合わさって残ることもあります。そして、インターネットは非常に多くの情報が集まっているため、検索すれば簡単に見つけられてしまうことがあります。
自分の情報がインターネットにないか、どうやって確認する?
自分の情報がインターネットに載っていないか確認することは、ご自身でできる第一歩です。難しく考える必要はありません。「インターネットで何かを調べる」のと同じ方法で行えます。
ステップ1:インターネット検索を開く
パソコンでもスマートフォンでも構いません。普段お使いのインターネットを見るソフト(例:Google Chrome、Safariなど)を開き、検索する画面を表示してください。多くの場合、画面の上の方や真ん中に、文字を入力する場所があります。
ステップ2:自分の名前や関連情報を入力して検索する
その文字を入力する場所に、ご自身の氏名を入力してみてください。例えば「山田太郎」さんの場合は、「山田太郎」と入力します。 もし、お仕事などで旧姓を使っていたり、別の名前で活動していたりする場合は、そちらの名前も試してみると良いでしょう。 さらに、もし心当たりがあれば、ご自身の氏名と組み合わせて以下のような情報も一緒に検索してみると、より見つかりやすくなる場合があります。
- 氏名 + 地域名 (例:「山田太郎 東京都練馬区」)
- 氏名 + 過去に所属していた団体名/会社名 (例:「山田太郎 〇〇町内会」「山田太郎 〇〇株式会社」)
- 氏名 + 参加したイベント名 (例:「山田太郎 〇〇祭り」)
検索結果には、様々なホームページの名前や説明が表示されます。これらの情報を見て、ご自身の情報が載っていそうなページがないか確認します。
もし自分の情報が見つかったら? 安心のための対策
検索してみて、もしご自身の写真や名前などが掲載されているページが見つかったとしても、すぐに慌てる必要はありません。まずは、どのような情報が、どこに載っているのかを落ち着いて確認することが大切です。
見つかった情報に対して取れる対策は、情報の種類や掲載されている場所によって異なりますが、一般的な方法をいくつかご紹介します。
対策1:掲載元に削除をお願いする
もし、個人的なブログや、小さな団体のホームページなどにあなたの情報が載っている場合、そのホームページの管理者の方に連絡を取り、削除をお願いできることがあります。
- 連絡先を探す: ホームページの隅に「お問い合わせ」や管理者の連絡先が載っていないか探してみてください。
- 丁寧にお願いする: 「〇〇という者ですが、こちらのページに私の情報(写真や名前など)が掲載されているようです。可能であれば、削除いただけますでしょうか」といった形で、丁寧にお願いのメッセージを送ります。
ただし、連絡先が分からない場合や、お願いしても対応してもらえない場合もあります。
対策2:インターネット検索結果から表示されないように依頼する
もし、見つかった情報が非常に古く、今のあなたとは関係がない情報なのに、検索結果に出てきて困るという場合、Googleなどの検索サービス会社に、特定のページを検索結果に表示しないよう依頼できる仕組みがあります。
- 検索サービス会社の窓口を探す: 各検索サービスには、プライバシーに関連する情報の削除依頼窓口が用意されています。例えばGoogleであれば、「Google 検索結果からの情報の削除」といったキーワードで検索すると、専用のページが見つかります。
- 手続きに沿って依頼する: 依頼には、削除してほしいページのインターネット上の住所(URLと呼ばれる、
http://
やhttps://
で始まる文字列)など、いくつかの情報が必要になります。手続きは少し難しく感じるかもしれませんが、説明をよく読みながら進めるか、詳しい人に手伝ってもらうと良いでしょう。
これは、元の情報がインターネット上から完全に消えるわけではなく、「検索しても見つけにくくする」という方法です。
対策3:法律や専門家への相談
もし、悪意のある情報や、どうしても削除できない重要な情報が見つかった場合は、法律の専門家(弁護士など)や、インターネット上のトラブルに詳しい機関に相談することも考えられます。お住まいの地域の消費生活センターなども、相談に乗ってくれる場合があります。
今後の予防策:周囲とのコミュニケーション
あなたがインターネットを使わないとしても、周囲の人があなたの情報をネットに載せる可能性があります。日頃から、ご家族や親しいご友人の方に「私の写真や個人情報をインターネットに載せる時は、一言教えてもらえると嬉しいな」といった形で、やんわりとお願いしておくことも、予防策として有効です。
不安になりすぎず、知識を持って安心を
あなたがインターネットをあまり利用しないとしても、知らず知らずのうちに情報がネットに残ってしまう可能性があることをお話ししました。しかし、これは特別なことではなく、インターネットが普及した現代では誰にでも起こりうることです。
大切なのは、この事実を知って、必要以上に不安になりすぎず、落ち着いて対処することです。まずはご自身の名前で検索してみることから始めて、もし気になる情報が見つかったら、ご紹介したような方法を試してみてください。
もし自分でやるのが難しいと感じたら、信頼できるご家族やご友人、あるいは公的な相談窓口に助けを求めることもできます。『ネットの足跡相談室』も、皆さんが抱える不安を共有し、解決の糸口を見つけるお手伝いをしたいと考えています。
インターネットは便利な道具ですが、情報を扱う上での知識を持つことは、自分自身を守るために非常に重要です。この記事が、あなたの安心に繋がる一歩となれば幸いです。