インターネット広告が「あなた向け」になるワケ ~気になる個人情報との関係~
なぜか私にぴったりの広告が出るんだけど…
インターネットを見ていると、「あれ?さっき調べたものと似たような広告が出てるな」とか、「前に買おうか迷った商品の広告が、しつこく出てくるな」と感じた経験はありませんか? まるで、あなたの興味や考えがインターネットに筒抜けになっているようで、少し気味が悪い、あるいは不安に感じられる方もいらっしゃるかもしれません。
なぜ、インターネットの広告は、私たち一人ひとりに合わせて表示されるのでしょうか? そして、私たちの情報はどのように使われているのでしょうか?
インターネット広告と「デジタルタトゥー」の関係
以前の記事で、インターネットの「足跡」、つまり私たちがネット上で残してきた情報(デジタルタトゥーとも呼ばれます)についてお話ししました。ウェブサイトを見た履歴や、検索した言葉、SNSでの投稿などが、知らず知らずのうちにデータとして残っていく可能性があるというお話でした。
実は、インターネット広告の多くは、この「デジタルタトゥー」と深く関係しています。私たちがインターネット上でどのような行動をとったか、どのようなことに興味があるかを分析し、それに基づいて広告を表示する仕組みが広く使われているのです。これを一般的に「ターゲティング広告」と呼びます。
なぜ「あなた向け」の広告が表示されるの?
ターゲティング広告の仕組みは、簡単に言うと、あなたの「興味」や「関心」に合わせて、広告を選んで表示するというものです。
例えば、あなたがインターネットで旅行先の情報を調べたり、旅行用品をよく見ているとします。すると、インターネットの世界では「この人は旅行に興味があるようだ」ということがデータとして蓄積されていきます。そのデータをもとに、旅行会社やホテル、旅行用品店の広告があなたに向けて表示されやすくなるのです。
これは、まるであなたがお気に入りのお店に行くと、「いつも〇〇を買ってくださるので、新しく入ったこの商品はいかがですか?」と店員さんが勧めてくれるようなものです。ただし、インターネットの世界では、もっと多くの場所でのあなたの行動が、瞬時に、自動的に分析されて使われるという点が異なります。
具体的に、以下のような情報が広告のために利用されることがあります。
- ウェブサイトの閲覧履歴: どんなサイトをよく見ているか。
- 検索履歴: どんな言葉を検索窓に入力したか。
- ネットショッピングの履歴: どんな商品を見たか、買ったか。
- 位置情報: どんな場所にいることが多いか、どんなお店の近くにいるか(スマートフォンの設定による)。
- SNSでの「いいね!」やフォロー: どんな投稿やアカウントに興味があるか。
これらの情報が組み合わされることで、「〇〇に住んでいて、△△に興味がある、くらいの年齢の人が好きそうな広告」といった形で、よりあなたに「ぴったり」と思われる広告が表示されるのです。
「あなた向け広告」のメリットとデメリット
メリット
- 関心のある情報が得やすい: 全く興味のない広告ばかりが表示されるよりは、自分にとって役立つかもしれない、新しい商品やサービスの情報を効率的に得られることがあります。
デメリット
- プライバシーの懸念: 自分のインターネット上での行動が細かく分析され、利用されていることに抵抗を感じる方もいらっしゃるでしょう。
- 情報が偏る可能性: 自分の関心に沿った情報ばかりが表示されることで、それ以外の情報に触れる機会が減ることも考えられます。
不安を和らげるための対策
「自分の情報が広告に使われるのは少し不安だ…」と感じた方も、ご安心ください。全く情報を利用されないようにするのは難しいですが、ある程度の対策をとり、利用され方を自分で管理することは可能です。
1. インターネット広告の設定を見直す
多くのインターネット広告を表示している会社(例えばGoogleやSNSなど)は、あなたがどんな広告を見たいか、あるいは見たくないか、といった設定を変更できる機能を提供しています。
- Googleの場合: 「Googleアカウント」の設定の中に「広告設定」という項目があります。ここで、Googleが表示するあなた向けの広告に使われる情報のカテゴリ(例えば「スポーツ」「旅行」など)を確認したり、あなた向けの広告(パーソナライズ広告)をオフにしたりすることができます。
- SNSの場合: 各SNS(Facebook、Twitterなど)の設定の中に、「広告」や「プライバシー」といった項目があります。ここで、どんな情報が広告に使われているかを確認したり、広告の表示設定を変更したりできます。
これらの設定画面は、少し分かりにくい場所にあることもありますが、「〇〇(サービス名) 広告設定」といった言葉でインターネット検索してみると、設定方法を解説したページが見つかることが多いです。
2. ウェブサイトを閲覧した履歴(Cookie)について知る
多くのウェブサイトは「Cookie(クッキー)」という小さな情報をお使いのパソコンやスマートフォンに一時的に保存します。このCookieが、あなたがどのサイトを見たか、どんな商品を買い物カゴに入れたか、といった情報を記憶し、その後の広告表示などに使われることがあります。
ブラウザ(インターネットを見るためのソフト)の設定で、Cookieの受け入れを制限したり、閉じるときに削除したりすることができます。ただし、Cookieを完全に拒否すると、一部のウェブサイトが正しく表示されなくなったり、ログイン状態が保てなくなったりすることがありますのでご注意ください。まずは、「設定」などから「プライバシー」や「閲覧履歴」といった項目を見て、どんな設定があるか確認してみるのが良いでしょう。
3. プライバシーポリシーを確認する
利用しているウェブサイトやサービスの「プライバシーポリシー」(または個人情報保護方針)には、あなたの情報がどのように収集され、利用されるかが書かれています。専門的な言葉が多いかもしれませんが、情報がどのように扱われているかを知る手がかりになります。
まとめ:知って、選んで、安心を
インターネット広告が「あなた向け」になるのは、あなたのインターネット上での行動や興味に関する情報が利用されているからです。これは、便利な面がある一方で、プライバシーについて考えさせられる機会でもあります。
大切なのは、必要以上に恐れることではなく、どのような情報がどのように使われているのかを知り、自分でコントロールできる部分があることを理解することです。今回ご紹介した広告設定の見直しや、Cookieについての知識を持つことで、インターネットをより安心して利用するための一歩を踏み出すことができます。
もし設定方法が分からなくても、無理に進める必要はありません。まずは「こんな仕組みがあるんだな」と知っておくだけでも、インターネットとの付き合い方が少し変わってくるはずです。
この情報が、皆さんのインターネット利用の安心につながれば幸いです。